不動産用語集

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建物明渡猶予制度

抵当権に対抗することができない賃貸借について、抵当権の実行による競売がなされた場合に、賃借人は競落人の買受の日から6ヵ月間に限り、当該不動産を明け渡さなくてよいという制度のことです。
民法の改正により、平成16年4月1日に創設された制度である。根拠条文は改正後の民法395条です。

1.建物明渡猶予制度の趣旨
ある不動産に抵当権が設定された場合、抵当権設定登記がなされた後に設定された賃貸借は、本来ならばすべて抵当権に劣後するのが原則です。
従って本来は、融資返済不能などの事情によって抵当権が実行された(すなわち抵当不動産が競売された)場合には、抵当不動産の賃借権者はその賃借権を抵当権者に主張することができないはずであり、抵当不動産の競落後には賃借権者は当該不動産を直ちに明け渡さなければならないのが原則です。
しかしこれでは、正常に当該抵当不動産を利用していた賃借人も直ちに明け渡しに応じなければならないこととなり、賃借人にとって競売という不測の事態により思わぬ損害を受ける可能性があります。
こうした不都合を緩和するための措置として、従来は短期賃貸借保護制度が置かれていたが、民法改正によりこの制度は平成16年3月31日をもって原則的に廃止されました。そこで、これに代わって創設されたのが建物明渡猶予制度です。

2.建物明渡猶予制度の内容
改正後の民法395条に規定されている建物明渡猶予制度では、建物賃借人は、建物の競売による代金を競売の買受人が納付した日から6ヵ月間は、当該建物の明渡しを合法的に拒むことができます。
この明渡しを拒む期間中は、建物所有者である買受人に対して、占有者(すなわち建物賃借人)は賃料と同額の金銭を買受人に支払う義務を負います。
仮に、占有者が買受人からこの金銭の支払いを督促されたにもかかわらずこれを支払わない場合には、占有者はもはや明渡しを拒むことができなくなります(改正後の民法第395条第2項)。

3.抵当権者の同意により賃借権に対抗力を与える制度
以上のような建物明渡猶予制度のほかに、建物の競売がなされた際に立退きをすることなく賃貸借を継続できるという制度が、平成16年4月1日より設けられています。これは、改正後の民法387条に規定されています「抵当権者の同意により賃借権に対抗力を与える制度」です(詳しくは抵当権者の同意により賃借権に対抗力を与える制度へ)。
参考文献:
関連サイト:
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